三井住友カードがAIを活用しコンタクトセンター業務を高度化

生成AIと親和性の高いチャネル

これは「生成AIとの親和性がメールやチャットのほうが高い」(小野部長代理)ことに配慮した選択でもあった。メールやチャットは顧客の問合せ内容がテキスト化されている。このため、生成AIが顧客のインテント(意図)を理解しやすい。

これに対して電話の場合は、顧客の声を音声自動認識システムによってテキスト化し、その文章から顧客のインテントを抽出するプロセスが必要になる。

アクセント、速さ、音質が異なる個々の顧客の声を音声自動認識システムが正しく認識できるか、という問題もあるし、顧客が途中で質問を切り替えたり、曖昧な表現を使ったりした場合でも、生成AIが問合せ内容を正確に理解できるかという問題もある。

音声自動認識と生成AIの精度を高水準に保たなければならないという二つのハードルがあるわけだ。

オペレーションサービス統括部の大保友実グループ長は「電話対応では、生成AIがリアルタイムで会話を処理しなければならないのも高いハードルだ」と指摘する。

これを実現するには、音声認識、自然言語処理、応答生成の全てが高速で処理されなければならない。さらに、ハルシネーションを防ぐには、オペレーターが生成AIの回答をチェックするプロセスを組み込む必要がある。電話対応で、生成AIの回答案を人がリアルタイムでチェックするのは相当に難しい。

こうした点にも配慮し、三井住友カードは「テキストベースで処理でき、リアルタイムのコミュニケーションではなく、オペレーターが介在しやすいメールやチャットに的を絞って、生成AIの活用を考えることにした」(大保グループ長)。

FAQをRAGに検索させる

コンタクトセンターに生成AIを実装するため、三井住友カードはELYZA(以下、イライザ)をパートナに選んだ。今回のプロジェクトでは、特にイライザのRAGに関する技術を活用した。

RAGは検索拡張生成を意味する。LLMによるテキスト生成に外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術だ。

顧客サービスへの活用となると、生成AIが間違った回答をすることは基本的に許されない。後述するように実際にオペレーターによる確認プロセスを組み込んでいるが、生成AIの回答案に間違いが多ければ、オペレーターの負担が増え、業務は回らなくなってしまう。

やはり、高水準の正答率を確保する必要がある。そのために、三井住友カードはイライザの技術・ノウハウを活用したわけだ。

コールセンターで生成AIを活用するには、RAGにオペレーター用のマニュアルなどを検索させ、回答案を生成AIに作成させることになるわけだが、マーケティング本部データ開発本部の平山晃大プロダクトオーナーは、「マニュアルをそのまま雑に投入すると、RAGが正しい情報にたどり着けず、生成AIが正しい情報を引用できない」という問題があるという。

こうした問題を解決するために、イライザが提案したのが、マニュアルではなくFAQのデータをRAGに検索させることだった。

質問と回答が1対1で結び付いているFAQであれば、RAGが検索しやすく、正しい情報を引き出せるようになる」(平山プロダクトオーナー)わけだ。

マニュアルには顧客対応に必要な情報が網羅的に記載されているが、大量の情報が羅列されているがゆえに、RAGが本当に必要な情報をピンポイントで探し出すことが難しいのだろう。

ただ、FAQは頻度の高い質問に対する答えを書いたドキュメントなので、全ての情報をカバーしているわけではない。

珍しい質問だと、RAGが必要な情報を見つけ出せない場合もあり得るだろう。だが、平山プロダクトオーナーはFAQに該当する質問がなかった場合は、RAGが検索するFAQに新しいナレッジを都度加えていくことで、精度を高めることができると考えた。 オペレーターが介在するので、RAGが情報を引き出せなかったり、代わりに関係のない情報を検索してしまったりした場合は、とりあえずオペレーターが正しい回答を作成し、必要であれば後で情報を追加することで、次からは正しい回答が作成できるようになる。

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