オリコがSMEをターゲットに、新たなデジタルプラットフォームを開発
オリエントコーポレーション(以下、オリコ)は2023年4月に、請求書カード払いサービス「OBS(Or...

管理グループもデジタル/AI利活用に取り組んでいる。25年2月21日から3月31日までの約1カ月間にわたり、生成AIを活用しチャットで入金約束交渉を行う概念実証(PoC)を行ったのだ。
オリコが初期督促に生成AIを活用しようと考えた背景には、「顧客とのコンタクトチャネルが多様化する中で、督促業務においては依然として電話や督促状などのリアルなチャネルが中心で、顧客接点の拡充が必要不可欠になっている」(石原卓志管理グループ管理企画部課長)と考えたからだという。
確かに、いまの若年層は電話をほとんど使わないといわれており、電話に依存していると、督促のためのメッセージを届けることすらできなくなるおそれがある。
また、督促業務に時間的な制約があり、顧客が入金交渉する時間も限られていることも課題だった。
さらに、社員の高齢化にも直面している。生産年齢人口が着実に減少する中で、「必要な業務量を処理できるよう、管理グループの体制を維持する必要性が高まっていた」(石原課長)わけだ。
こうした課題認識を基に、管理企画部は督促業務に生成AIを活用できないかと考え、今回のPoCを行った。初期督促において督促業務を自動化できるかどうか、その可能性を検証する試みだ。
とはいえ、生成AIには事実に基づかない情報を生成してしまうハルシネーションの問題がある。顧客に誤った案内をしてしまったり、法令違反を起こしてしまったりすることは避けなければならない。
このため、PoCではそもそも生成AIに入金交渉が可能かという点と合わせて、要件を具備することで法令違反となるリスクを除くことができるかという点を検証する必要があった。
PoCはオンライン融資管理システムや債権管理回収システムのプラットフォームを運営しているクレジットエンジンをパートナーに行った。
初期延滞者に対する督促は通常、IVR(自動音声応答)により、当日を含め1週間以内に入金約束を取る。
だが、それで入金約束が取れなかった顧客については、有人対応による交渉を行う。今回生成AIに交渉させたのは、有人対応していた1週間以内の入金ができない顧客で、オートローン商品とカード商品の顧客に対象を絞った形で、生成AIに模擬交渉させた。
模擬交渉なので、個人情報は一切使用せず、架空の属性や延滞理由などの概略的なペルソナを描き、督促業務を行うサービスセンターの社員が顧客となって、生成AIと交渉を行い、入金約束が取れるような交渉ができたかどうかを判定する仕組みをとった。担当したのはサービスセンターの教育係を務めるような督促業務の経験が豊富なベテラン社員だ。
入金約束を取得できた率は81%で、これは有人交渉した場合の80%と同水準のパフォーマンスだったというから、自動化できる可能性は大いにあるということだろう。
法令違反については、例えば弁護士介入のあった顧客にも入金交渉をしてしまうといったケースが見られたが、プロンプトの設定により、そうした法令違反を回避できることも確かめられたという。
実用化する場合は、カード会員であれば会員向けのウェブサービスである「e-Orico」から、カード会員以外のオートローン等の顧客ならSMSでURLを送り、督促用のサイトに誘導する形を想定している。
管理企画部の内田和宏部長は、「回収部門としては単に回収実績を上げたり、回収効率を高めたりするだけでなく、お客様の信用をいかに守るかという点を重視している」と強調する。
「これまでは、サービスセンターの営業時間にしか、顧客とコミュニケーションが取れなかったが、生成AIで督促業務を自動化できれば、お客様は時間や場所の制約なく、入金相談ができるから、入金のタイミングを少しでも早くでき、自身の信用状態が悪化するのを防ぐことができる」からだ。
野口執行役員は「AIで業務が変わるという認識は、社内にまだ根付いていない。だが、生成AIの活用がプロンプトを打ち込んでチャットしているだけでは限界がある。人が当たり前にやっていたことが、AIに変わるという実感値を創出する意識変革が何よりも必要だ」と指摘する。
この1年間の取組を経て、オリコのAIによるトランスフォーメーションがどこまで加速するか注目したい。
月刊消費者信用2025年8月号掲載
最新情報などを配信中!!