リテール金融白書/市場分析編/電子マネー市場/大手2事業者がビジネスモデルを革新

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非接触ICチップのFeliCaを活用した電子マネー8種(楽天Edy、SUGOCA、ICOCA、PASMO、Suica、Kitaca、WAON、nanaco)の2025年の決済金額は6兆36億円と、前年比3.0%減少した。決済件数は58億400万件で、3.4%の減少。決済金額・決済件数共に2年連続で減少した。表1に暦年ベースと年度ベースの実績をまとめたが、減少傾向にあることは、年度の実績が暦年の実績を下回っていることでもわかる。電子マネーの不振の原因を探りつつ、電子マネー事業者によるビジネスモデルの変革の動きを追った。

決済金額・決済件数がともに2年連続で減少

電子マネーの市場規模については、デビットカードと同様、日銀の決済動向における電子マネーの決済金額等が引用されることが一般的だ。

この統計の調査対象は専業系1社、交通系5社、流通系2社の8社で、いずれもFeliCaベースで、前払い式支払い手段として非接触決済を行う電子マネーだ。

同じ交通系でも名古屋市交通局と名古屋鉄道が共同運営するmanacaや東海旅客鉄道のTOICA、西日本鉄道のnimocaなどは調査対象ではない。

その意味で、この統計は動態調査であり、市場全体をカバーするものではないが、市場の動向を把握できる貴重な統計といえる。

なお、同じくFeliCaベースで電子マネーのカテゴリーに括られることの多い、QUICPayとiDは、クレジットカードのPAN(真正のカード番号等)と紐づけられた電子マネー用のトークンで生成された決済電文をクレジットカードの決済電文に変換したうえで、クレジットカードとして決済処理するので、決済動向が調査対象とする電子マネーとは異なるスキームだ。このため、日銀は電子マネーの調査対象としていない。

電子マネーの決済金額の推移を見ると、コロナ禍の影響があった2020年に決済件数が減少、2021年に決済金額と決済件数が減少したことがある(図、表1)。

                     図

在宅勤務やオンライン授業が広がり、公共交通機関の利用が減少したのに伴い、交通系ICカードの購買等での利用が減少したためといわれた。

だが、経済活動が回復した2022年、2023年は決済金額・決済件数が2年連続で増加し、電子マネー市場は再び成長軌道に乗ったように見えた。 だが、コロナ禍のような特殊要因がないのに、2024年、2025年と2年連続で決済金額と決済件数が減少したことで、電子マネー市場は縮小期に入ったとも考えられる。

コード決済にシェアを奪われた電子マネー

電子マネー市場が縮小している原因は、コード決済へのシフトが進んだためとの見方が一般的だ。

キャッシュレス市場における4つの決済手段のシェアを見ると、2020年には7.0%あった電子マネーのシェアは2025年には3.7%と、半分近い水準になった。その間、コード決済は3.7%から13.9%へとシェアを高めた(クレジットカードからの利用分を含んだ構成比)。

こうした傾向は、電子マネーとコード決済が競合しやすい少額決済分野では特に顕著だったと推察される。1つの例にすぎないかもしれないが、キャッシュレス推進協議会の「コンビニエンスストアにおけるキャッシュレス動向調査」を見ると、コンビニにおけるキャッシュレス決済の主役が電子マネーからコード決済に移ったことが明確に読み取れる(表2)。

この調査は3大コンビニ(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)における、国際ブランド決済(クレジット、デビット、プリペイド)、電子マネー決済、コード決済、その他の決済金額と決済件数を集計したものだ。

それによると、電子マネーの決済金額のシェアは2020年に54.2%と最も高かったが、2025年には27.2%と約半分に落ちた。

逆にコード決済は25.9%から48.1%に上昇し、いまでは最大のシェアを誇っている。電子マネーの決済額は2020年の2兆724億円から、2025年には1兆6408億円に減少している。

決済件数で見ても、同様の変化が起きた。

電子マネーがコード決済にシェアを奪われた原因はいろいろ考えられる。ポイントによる利用促進策において、コード決済に後れをとった。物理的なカードを前提にすれば、生活のあらゆるシーンでスマホを起点とする顧客体験が浸透する中で、スマホ起点のUI/UXを築けなかった。

電子マネーの種類(ブランド)、カードタイプとモバイルタイプの違いによっても異なるので、一概にはいえないが、残高確認のしにくさや残高入金の手間が顧客体験の向上を阻んでいた部分もある。 PayPayやd払い、au Payといった大手のコード決済はアプリ上で残高確認ができるのは当たり前だし、クレジットカードや銀行口座、キャリア決済を紐づけることによって、自動入金機能を実装している。

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